
どうも!編集長の宮澤です。
今回は7月30日〜8月1日まで開催された「2019さが総文 郷土芸能部門(和太鼓)」について書いてきますよ〜!
そもそも「総文」って…?
正式名称は「全国高等学校総合文化祭」。
文化庁や全国高等学校文化連盟(高文連)が主催。
名前の通り、各都道府県を代表する高校生たちが集まり、その成果を披露する”文化祭”です。
郷土芸能のみならず、演劇・合唱・写真・囲碁・弁論などなど開催部門は19部門!
「インターハイ(正式名称:全国高等学校総合体育大会)」に対して、総文は「文化部のインターハイ」と呼ばれるとかなんとか。
郷土芸能部門の会場、武雄市文化会館の様子 出典:さが総文HP https://sagasoubun.jp/main/4789.html
第43回を迎える今年度は九州は佐賀県での開催でした。
開催日程は2019年7月27日(土)~8月1日(木)の6日間。
公式HPはこちら↓
https://sagasoubun.jp/
郷土芸能部門の開催地、武雄市!
いわゆる「和太鼓部」が出場するのは「郷土芸能部門」です。
郷土芸能部門は「伝承芸能」と「和太鼓」に分かれており、和太鼓部は後者に該当します。
全国各地に伝わる祭囃子、神楽、民謡、踊りなどの「伝承芸能」と伝承曲・創作曲を含む「和太鼓」の2部門によるコンクール形式の大会です。各部門の上位2校は国立劇場で行われる優秀校東京公演に推薦されます。全国から集まる高校生の、若さあふれる力強い演技・演奏が会場を大いに盛り上げ、感動を呼び起こすことでしょう。
さが総文公式HPより引用 https://sagasoubun.jp/main/3297.html
総文は部門ごとに会場が分かれており、県内のいたるところで開催されています。
郷土芸能部門の開催場所は武雄市にある武雄市文化会館!
武雄市といえば何と言っても開湯1300年の武雄温泉!(温泉行きたかった…)
武雄温泉楼門 出典:武雄市HP https://www.city.takeo.lg.jp/index2.html
そんな素敵な街、武雄で開催された総文郷土芸能部門!果たしてどうなるのか…!
ようやく本題!大会レポート!その前に…
大会レポートの前に結果から見てみましょう。
出場校は58校!うち19校は伝承芸能部門、39校は和太鼓部門での審査対象となります。
早速結果を見て行きたいのですが、ざっくり説明。
各部門上位4校、合計8校のみ発表されます。
「文部科学大臣賞 最優秀賞」は両部門合わせて1校のみ選出
「文化庁長官賞 優秀賞」は両部門合わせて3校選出
「優良賞」は両部門合わせて4校の選出
というような内訳となっています。
つまり、最優秀賞は部門の垣根を超えて与えられる賞なのです!
(審査が別なら両方にあってもいいじゃん、とは思いますが…)
それでは結果発表!
【文部科学大臣賞 最優秀賞】
・東京都立 南多摩中等教育学校 (和太鼓部門)
【文化庁長官賞 優秀賞】
・大分県立 由布高等学校 (伝承芸能部門)
・沖縄県立 八重山農林高等学校 (伝承芸能部門)
・熊本市立 必由館高等学校 (和太鼓部門)
【優良賞】
・新潟県立 羽茂高等学校 (伝承芸能部門)
・岩手県立 北上翔南高等学校 (伝承芸能部門)
・日本福祉大学付属 高等学校 (和太鼓部門)
・愛知県立 松蔭高等学校 (和太鼓部門)
以上の結果となりました!
受賞された高校の皆さん、改めておめでとうございます!
まずは受賞校のレポート!

それでは実際に総文を見に行った、私の主観で勝手にレポート!始まります!まずは受賞校!
【優良賞】日本福祉大学付属 高等学校
・発表順:20番目(2日目の5番目)
・曲名:絆~和太鼓組曲「海嶺」より~
・江戸時代に実在した愛知県の水主、音吉のエピソードを題材にした曲。
・海を彷彿とさせる配置と振り付けが印象的。
・照明で雲の模様を出したりと細かい演出も。
・雪バチや竹バチ、法螺貝などを用いて音色に変化を持たせていた。
・篠笛は総勢18名(数え漏れあったらごめんなさい!)
◎良かったところ
強豪校の印象がある日本福祉大学付属高等学校さん。
演出には細部までの気遣いが見受けられます。
特に照明は出場校の中で一番凝っていたように思います。
バチを変えることで音色も変える手法は、終始パワープレイが多い総文では印象に残っています。
また、大人数での篠笛は見た目の迫力がすごかったです。笑
◎気になったところ
振り付けの中でほぼ全員が客席に背中を向けて演奏する演出がありました。
斬新ではありますが、こちら側にその振り付けの意図が伝わっていたかどうかは怪しいと思います。
そもそもですが、太鼓が全然鳴っていませんでした。というより客席に届いていないだけかもしれません。総文は市民ホールのような会場で行われることが多いと思いますが、そのような会場では楽器の配置が音の飛び方を左右します。あまり奥まった配置は得策ではないでしょう。
いわゆるエンタメ要素が強めの和太鼓部にありがちなのですが、強制された笑顔は見ていて気持ちの良いものではありません。笑顔が下手だと言っているわけではなく、無理やり笑わせる演出はいかがかなと思います。
【優良賞】愛知県立 松蔭高等学校
・発表順:35番目(2日目の20番目)
・曲名:神楽太鼓組曲「祈り」
・尾張南部太鼓の同好会が元になっている
・曲名の通り、篠笛は神楽のようなメロディ
・締太鼓は伏せ、長胴は横打ちとこちらも神楽から着想?
・バチを投げたり回したりの振り付け?がとにかくすごい!並並ならぬ練習量だったでしょう…
・獅子舞が登場。
◎良かったところ
上でも書きましたがバチを投げたり回したりの振り付けがすごい!
どれだけ練習したのだろうか…拍手!
笛のメロディや太鼓の配置、獅子舞の登場など、曲名の回収が分かりやすい。神楽をモチーフにしていることが明確。
◎気になったところ
ユニゾンのフレーズがちょこちょこと出てくるが、基本的に揃っていない。揃えば効果的ですが、揃わないとその印象が強くなってしまうので惜しい。
笛の口唱歌をそのまま歌のように熱唱するのですが、そうしなければいけない理由がよく分かりませんでした。
いわゆるエンタメ要素が強めの和太鼓部にありがちなのですが、強制された笑顔は見ていて気持ちの良いものではありません。笑顔が下手だと言っているわけではなく、無理やり笑わせる演出はいかがかなと思います。
【文化庁長官賞 優秀賞】熊本市立 必由館高等学校
・発表順:54番目(3日目の10番目)
・曲名:肥後の鼓舞
・舞台後方に熊本城が描かれた巨大な幕!
・曲の始まりは熊本らしく「おてもやん」
・かつぎ桶太鼓の利点を最大限活かしたフォーメーションは見応えあり!
・音量の大小の差(ダイナミクス)は出場校の中で一番大きかった(と思う)。
◎良かったところ
有名な熊本民謡から始まったのでキャッチーな印象。ハモリも綺麗で◎
上にも書いた通りかつぎ桶太鼓のフォーメーションは見事でした。
音量の差、ダイナミクスがしっかりしていて、演奏にメリハリを持たせていました。
篠笛を吹く人たちが舞台前方に出てくる演出は、見た目はもちろん音量の問題もカバーできていて良かった。
◎気になったところ
笛を吹く時の動きは必要ないと思う。くねくねとしていてカッコいいかどうか疑問。
いわゆるエンタメ要素が強めの和太鼓部にありがちなのですが、強制された笑顔は見ていて気持ちの良いものではありません。笑顔が下手だと言っているわけではなく、無理やり笑わせる演出はいかがかなと思います。
【文部科学大臣賞 最優秀賞】東京都立 南多摩中等教育学校
・発表順:28番目(2日目の13番目)
・曲名:八多化の響き
・八多化=八丈の名の通り、八丈太鼓の打ち方
・ユニゾンのフレーズが曲のほとんどを占める(地打ちは入ってました)
・太鼓節も入る
・曲そのものは「島太鼓をモチーフにした現代曲」という印象
◎良かったところ
まず大前提として全員が全員とても上手でした。毎年実際に八丈島にて行われる合宿の成果がこれでもかと発揮されていました。何より基本のフレーズの揃い方がエグい。マジですごい。
総文では珍しいソロコーナーが数カ所設けられていました。総文に出場するのは学校です。教育機関では誰かひとりが目立つことを避けがちですが、あえてスターを生み出すことで互いに切磋琢磨するキッカケにもなっているのではないでしょうか。
◎気になったところ
特にありません(あったかもしれませんが覚えてないです。それくらい良かったです。)
番外編!ざっくりレポート!

個人的に気になった高校をざっくりレポートします!
【宮崎県立富島高校】

「某宮崎の有名太鼓団体」を彷彿とさせる早打ちと、九州独特のキレのあるバチの上げ方が際立ちました。
複雑なウェーブや振り付けのシンクロ具合は膨大な練習量を伺わせます。
ダイナミクスもバッチリ。演出では無く技術で強弱を付けられる数少ない学校でした。
【MIHO美学院】

曲名「不二」の通り、太鼓の配置からすでに富士山!?(多分)
太鼓の音高差も相まって、そびえ立つ富士山の荘厳さが伝わってきました。
曲調はEDMを彷彿とさせる4つ打ちや4拍のリフレインが印象的でした。
途中難解なところもありましたが、ユニゾンのフレーズは伝わりやすさ○
【和歌山県立紀北農芸】

大人数の学校が目立つ中、ここは6人のみ。
舞台前方に寄せられた配置、ノータイムから掛け声で入るユニゾンがとても効果的で人数のハンデを微塵も感じさせません。
実際に耳まで届く音量は4倍近い人数を擁する学校とさほど変わりません。
不自然な打ち方の揃えもなく○
【山梨県立韮崎工業】

全体的にレベルが高かったです。
チームのグルーヴ、アンサンブル、楽器やバチの使い分けなどなど…
なによりも曲がキャッチーでした。
メロディーやフレーズが耳に残っている方も多いはず。
【武蔵越生高校】

各パートのソロがあり、それぞれの太鼓の特色を活かした内容になっていました。
なによりも印象的なのは曲の展開。
今大会で最も起承転結のハッキリとした構成でした。
最後の盛り上がりは「曲を終わらせる力」を感じ、誰が聞いてもフィナーレだと分かるのではないでしょうか。
全体の傾向と講評

はい、以上が「一般観客」として観覧した私の個人的なレポートになります。
お気付きの方もいらっしゃると思いますが、上位4校のうち3校で同じ感想を述べています。
”いわゆるエンタメ要素が強めの和太鼓部にありがちなのですが、強制された笑顔は見ていて気持ちの良いものではありません。笑顔が下手だと言っているわけではなく、無理やり笑わせる演出はいかがかなと思います。”
と。
無論、受賞校以外でも何校も同じような傾向が見受けられました。
好みの問題?感覚の問題?かもしれませんが、私はものすごい違和感を覚えたのでしつこく書いてみました。
「高校生らしさ」なんて簡単に言いますけど、それがこの結果に繋がっているのだとしたら…
違和感を覚えたのが私だけならいいんですけど…
そして閉会式では講評が述べられました。
簡単にまとめてみましたのでご覧ください。
(まとめるにあたり言葉を並び替えたりしていますが、齟齬の無いように細心の注意を払っています)
①舞台の上で行われることは全て意味を持ってお客さんの元へ届く。
「演奏者同士で顔を見合わせる動作があるが、別のパートやソロを応援しているのか、何かが起きて不安を感じてキョロキョロとしているのか、その辺りが予期せぬ表現となって現れている可能性がある」
②テンポやリズムは大切だが、和のテイストが少し不足している。
「洋楽・クラシックと違って合っている中に微妙なズレや呼吸の膨らませ方がある、日本古来の伝統的な音楽が持っている和のテイストが、デジタル的なテンポの合わせ方に上乗せされると良い」
③声を出すことは大切だが、肝心の太鼓の方にズレが生じてしまっている、本末転倒。
「声の出し方を工夫しながら演奏に支障のないように」
④あくまで郷土芸能部門。お祭りや郷土芸能を体感してほしい。
「郷土芸能の和太鼓部門である。実際のお祭りや郷土芸能を現地で見て、触れて、自分たちの目と耳と体で空気感を吸収して下さい。技術ばかり磨いても表現できるものではない、自身の体で体感して受け継いでいくもの。youtubeやSNSで簡単に見れる世の中で便利ではあるが、実際に現地で触れるのが大事、そうすることで自然と和のテイストが出てくるのではないか」

まず①ですが、確かにそのような演出が多く見受けられました。
もはや演技力の域ですが、気になる人は気になるかもしれません(私はそういった目配せは全て演出として受け止めました。不安が原因のキョロキョロは見付けられませんでした。)
次に②。平たく言うと「グルーヴ」と言うことでしょうか。
一番難しい部分だと思います。
よく「間」という言葉を使いますが、実際はただの休符だったりしますし…
「和のテイスト」が足りない、という表現をしていますが、もしかしたらこの大会については「洋のテイスト」の乱用を否定しているのかもしれません。
これについては④に直結するのでそちらもお読みください。
③は全くもって同意します。
無理やりな笑顔が気になるのと同じで、指導者がやたら大きく特に意味もなく声を出させている印象があります。
そんな指導者の方は高校生って元気でいいね!って言わせたいのでしょうか?でかい声出せば元気って…本当にそう思いますか…?
最後に④。
これが一番引っかかりました。
いや、内容には引っかかってません。
実際にお祭りや郷土芸能を体感することは素晴らしいことですし、率先してやるべきだと思います。
しかし…
演目は郷土芸能全般とし、「伝承芸能部門」と「和太鼓部門」に区分します。
伝承芸能部門
第43回全国高等学校総合文化祭(2019さが総文)「郷土芸能部門参加要項」より引用 https://sagasoubun.jp/site_files/files/07_kyodogeino_youkou.pdf
郷土的・地域的な特色を持ち、地域の文化活動として広く住民に親し まれ、地域に根ざした伝承芸能であることとします。具体的には次の 3項目の分野とします。
(1) 先人の遺産を保存し、今に伝える伝承芸能
(2) 上記が現代においても継承され、地域に根ざした発展・変化を遂 げつつある伝承芸能
(3) 新たな地域文化活動として創作されたものであり、既に地域に広 く定着しており、住民の手によって今後の発展が期待されるもの
和太鼓部門
特に定めません。
上演時間
「伝承芸能部門」においては13分以内、「和太鼓部門」においては8分以内とし、 緞帳の上げ下ろし時間18秒を含むものとします。団体紹介、演目解説及び入退場 (舞台転換)の時間は5分以内とします。 (※緞帳が上がる前に音を出さないでください。)

あれ…?
一行目、「郷土芸能全般」って書いてありますよね?
私も講評を聞いて違和感を覚えて初めて要項を読んだのですが…
これって世間一般が言う「和太鼓部」は出場できないことになりませんか?
もし出場を認めるのだとしたら、出演基準が「特に定めません。」だけなのはマズイ気が…
そして今回の講評。
郷土芸能で無くても出場できますが、審査に影響します。
ってことでいいんですかね?
おわりに

色々と書いてきましたが、最優秀賞の南多摩中等教育学校さんを見たとき、「あ、ここが優勝だ」と思いました。
そのぐらい素晴らしい演奏でした。
貴重な3年間を賭けて頑張っている高校生のためにも参加要項や審査基準の精査は是非ともお願いしたいところではありますが…
何はともあれ、参加された皆さん!素晴らしい演奏をありがとうございました!
来年の総文は高知県!
高校生のエネルギーを直に感じれる貴重な機会です!
近隣の方はぜひ足をお運びください。
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